国立新美術館で2/3から2/14まで開催されていた『メディア芸術祭 受賞作品展』に行ってきましたので、印象に残った作品を紹介していきます。
50 . Shades of Grey
CHUNG Waiching Bryan [アート部門大賞]
作者が人生で学んできたBASICやActionScriptなどのプログラミング言語を使って50段階のグレースケールのグラデーションを描いた作品。
技術進化とともに新しい言語やスクリプトが開発され、自分たちはそのたびに新しい言語を使いプログラムを書きアプリケーションを作成していきます。エンジニアは常に新しい技術を身につけていないと時代に取り残されてしまいます。慣れた言語が時代遅れになっていく時の物寂しい感覚、新しい言語を学ぶ時の期待と不安。自分はそんな感情とともにプログラミング言語とは付き合っていますので、自分の勝手な気持ちかもしれませんがこの作品に対しての感情移入するところはありました。作品はシンプルですが、それぞれの言語で作られたグラデーションの濃淡を見ていると作者の人生を見ているような感覚になり引き込まれます。
The sound of empty space
Adam BASANTA [アート部門優秀賞]
この作品は以前から知っていたので実際に体験できてよかった。動画で見るより実際に体験した方がずっといい。動画だとサイズ感がわからなかったが40〜50センチぐらいの瓶にスピーカーとマイクが入っており、その距離によってハウリングが起こる。
閉じ込められた空間の中でスピーカーの位置によってハウリング音が変化していくのだがしばらくヘッドホンで聞いていると瓶の中の空間に音波が充満しているのを感じ、音を聞いているというより音を見ているという方が近いかもしれない。視覚、聴覚が逆になるような不思議な感覚になった。
Communication with the Future – The Petroglyphomat
Lorenz POTTHAST [アート部門新人賞]
『魔法の美術館 REPORT』で感想としてインスタレーションなどの作品をどうやって残していくのか?と書いたが、こちらはデジタルデータをどうやって残していくのかを実際に実践した作品である。
短期的にはコンピュータやHDDなど記憶媒体にデータを蓄積していけば良いのだがそれって千年後、一万年後に残っているのだろうか?とふと思う時がある。この作品は石のモニュメントにメッセージを掘るという一見進歩とは真逆の行為をしているようだが、情報を残すという観点から見るとその行為はベストな方法かもしれない。数千年前の石に刻まれた文字や絵が残っているという事実があるのだから。
昔、大学の授業で教授が現代も実は石器時代と呼べるのではないかということを聞いたことがある。CPUで水晶が使われていたり、たまにニュースで見る電子機器に使われているレアメタル、それらは正しく石であり、その石がないと現代社会は成り立たない。だから現代は石器時代なのだというわけである。
大昔の人は石で石を削り情報を残してきた。この作品も同様にコンピュータで(石)で石を削っていると考えると行為自体は同じことをしていることになる。その点が個人的には面白みを感じた。
Solar Pink Pong
Assocreation / Daylight Media Lab [エンターテインメント部門優秀賞]
人の動きを検知するインタラクティブ作品はデジタルデジタルし過ぎというかデジタルから抜け出せないみたいな感じがあり頭打ちみたいになってるんじゃないかと最近感じることがよくあったのでこの作品を見たときは久しぶりに『おおっ!』ってなった。この作品はアナログ→アナログとなっており素晴らしいと感じた。もちろんセンサーなどを使って内部ではデジタル処理をしているのだが最後の出口をアナログにしているところがすごくいい!
太陽を使いPING PONGできるので本当に自然と遊んでいる感じになり、作品にコンピュータが使われているということを忘れさせてしまう。
更に凄いなと思ったのが、ソーラーパネルで電気を取ってきてその電力で動かしているところだ。作品がすべて太陽の力で成り立っているではないか!かなりお気に入りの作品なので体験してもらいたい!
全体的な感想
去年は仕事が忙しくて行けなかったのだが、天候も関係しているのだろうけど2年前と比べて来場者がかなり多く感じた。多くの人にこういった作品が見られるのはすごくいいことだと思う。
それと今回パフォーマンスやデモンストレーションが多かった。2年前はそういうのが一切なかったのでちょっと雰囲気が変わって少し驚いた感があるのと同時にパフォーマンス中に別作品を見ているとその音が気になってしまい見ている作品を純粋に見れない感じがあった。
しかしパフォーマンスやデモンストレーションが生で見れるのは、受賞者がどんな考えで作品を作ったのかなど聞けたり顔が見れるのですごくいい体験たと思う。
それとは逆にメディアアートとかインタラクティブ作品の存在が小さくなってる気がしたのは残念。そもそもそのくくりで考える事自体が古いのかもしれないが。
なんにせよ、全体的にやはり奥深い作品やかなり練られた作品が多く、刺激的であった。来年、再来年ぐらいに自分も展示されるような作品が作っていきたい。
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